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父への手紙

私が父と再会をしたのは16歳の時

精神科の病棟で薬で虚ろな意識の私を見て貴方は床に泣き崩れながら私を手離したことを詫びた

さ迷っていた私の意識は肉体に戻りしっかりと状況を把握した

その時、始めて人の誠実さを私は観た

そこには怒りや憎しみなどは全く沸いてこなかった

忙しい中、休みの度に何度も病棟を訪れず外出をして社会へのリハビリに時間を費やしてくれた

再会はできたものの娘の姿を見てどんなに苦しかったか

貴方の気持ちを思うと申し訳ない気持ちが溢れてきた

『ここにいては行けない』

それだけでの想いで病院を抜け出して社会へ飛び出した…

あれから30年…

一度たりとも貴方を恨んだこともないし、貴方の新しい家族を妬んだこともない

そして、貴方は私を厳しい環境に置き手離したことの言い訳を言ったこともない…

只ただ、私を手離したことの罪悪感を背中に背負い生きてきた

会う度に発せられる私への言葉は

『悪いなぁ、お前には何にもしてやれなくて…』

その思いの深さと愛の重さに耐えられなく貴方に会う足を遠ざけた…

私が貴方と別れたのは二歳になる前

言葉は使えなくても無意識は覚えている、あの時の痛みも哀しさも何もできないもどかしさも

だから

貴方は生きていてくれれば良かった、それだけで喜びの存在

無意識の中にある愛の認識は何かをしてくれたとかではない

産まれてから46年間、一度も一緒に暮らしたことなどないが貴方の愛に疑いを持ったことはない

子供の頃、不思議と父親のいない寂しさを感じたこともない

貴方の存在を始めて知った9歳の頃

『大人になった時にいつか会いに行こう』

そう決めた時から貴方の大きな愛をより身近に感じて生きてきた…

大人の一時の感情の縺れで生き別れている親子は沢山いる

私も本来なら親となる年齢になり、そんな相談もお受けする

私が言うことはいつも一緒

『お子さんが会いたいと思った時は会わせてあげて下さいね』

和解や許しは量子場調整で調整できますから…